「――捜索する側の人間が捜索されてどうすんだよ」


だるそうに言葉を発する幼馴染――ゼスト。彼の左手は私の右手首をしっかり掴んでおり、一向に離してもらえる様子がない。


「……手首、痛いんだけど」


「ダメだアホ」軽く私を罵倒していおいて、彼は続けた。


「お前を探すのにどれだけ苦労すると思ってんだ。勝手に迷子になってんじゃねーや」


勝手にとは何だ、勝手にとは。でも、そんなふうに反論する立場でないことは私だってよくわかっている。ここはおとなしくゼストに引っ張られている方がいい。


結局、あの男は完全に見失ってしまった。それ以降見つけることもできなかった。まあ別に、今日やり遂げなければならないわけでもないから、またあのビルの前で待機しておけばそのうち追跡することも可能だろう。


ビルとビルの隙間から、オレンジ色の光が私たちを照らす。空が窮屈そうだ。私たちの『家』から見える空は、もっと自由で穏やかな時間を過ごしているというのに。


私にはやはり、都会は合わない。


あの『家』もかなり騒がしいけれど、そこで過ごしている方がずっと心地がいい。


彼らは普段から私の存在に気づいてくれないし何度主張したって最終的にはいないことにされてしまうけれど、それでも私はあの場所がいい。


「なんだかんだ言って、私のこと探してたんだね」


「だから偶然だって言ってんだろ」


“ありがとう”なんて今は絶対に言ってやんないけれど、こうやって話せる人がいるから、私はこのままでいい。


――明日からまた、頑張ろう。