いかにも都会です、みたいな場所は昔から苦手だ。まぁ生まれた場所がド田舎だったのだから仕方のないことではあるのだけれど。


あの『家』で幼馴染であるゼストたちと暮らし始めたのは約10年前。私だけでなく、あそこにいる人たちはみんなワケありだ。


お互いに詳しい事情とかを言及するようなことはしないが、みんなそれぞれに抱えているものがある。だけど、そういうコンプレックスになりうる部分も逆に曝け出して生活しているメンバーも中にはいる。


そのうちの一人が私だ。えっへん。


そして今、都会の街並が苦手な私は、案の定迷子になっている真っ最中なのであった。……なんてこった。


ゼストのせいで見失ってしまったあの男を探すため、とにかく手当たり次第に路地に入ったり角を曲がったりしていたら、今いる自分の場所わからなくなってしまったのだ。


時間は午後6時20分を過ぎた頃。今まで真っ白だった光がだんだんと赤みを帯びてきている。


そろそろ帰らなければ。でもあれ? コレ、どうやって帰ればいいんだっけ。あれ? 道、わかんなくなっちゃったんだけどどうしよう。


あれ?


……………………。


マップ……。誰か私にマップを恵んでください。もしくは私でもわかるような道に連れて行ってください。


ただでさえ影が薄いのにこんな人気のない場所で永遠に彷徨うなんて嫌だぁぁぁ!


ああどうしよう。いやホントにどうすればいい。ていうかどうにもできない。


「ヘルプミィィィィィ! 誰かァァァ!」





「――うっせえ」





………………え?


とりあえず大声を出せば姿は見えなくても声を頼りに誰かが駆けつけてくれるだろうと信じて叫んだ私。


そしてそこで耳に入ってきた私への罵声。


――――――……まただ。


また、この声。


私はその声を昔から知っていて、聞けば不思議といつだって落ち着くし安心できる。


普段は耳に入ってくるだけでちょっとイラッとするのに、こういうときになるとなぜかほっとする。


いつだってこの声の主は、ヒーローみたいに駆けつけてくる。


全然カッコよくなんかないけれど。


でも。


幼いころから、ずっとヒーローみたいだった。


「どうしてここに……」


そこには。


さっき私とは反対方向に向かったはずの、幼馴染がいた。





「偶然だ」





『あの日』と同じ台詞を吐いて、いつものように平然とした顔で現れるそいつ。


ほんの少し……鼓動が速くなったのは、たぶん私の気のせい。