自室にて。
私は脱力感でいっぱいだった。
私に下された任務は、依頼人の旦那の追跡。普段どこでどんな行動をしているのか、事細かに調査しなければならないのだ。
いや違うな。下されたっていうか、押し付けられたと言う方が適切か。
全てはゼストが悪い!
あの嬉しそうな顔……。思い出すだけでもイライラする。
「よールナ」
噂をすれば影。この場合は噂とまではいかないけれども、その言葉は今のこの状況にピタリと当てはまる。
そう。
ゼストがやってきたのだ。何事もなかったかのような顔で。私をあんな任務に行かされなければならなくなってしまった現状を作り出した張本人のくせに……!
「お前、追跡任務に行かなくていいのか」
いけしゃあしゃあとよく言えたものだ。
「あんたが行けば」
「何で俺が。お前の仕事だろ」
「そう仕向けたのはあんただけどねバカゼスト!」
何が嬉しくて浮気現場を見なければならないの。ほんと腹立つ。
……もういい、と私は渋々部屋を出るのだった。