「浮気調査っていうのは、具体的にどうするの?」


そう言ったのは、シフォンくんという男の子。彼もこの『家』の住民兼ここで働く探偵だ。


私より一つ年上の彼は、大中小それぞれの大きさの黒いボタンのついたニット帽を常に被っている。人懐っこい部分もあって、女の子が私しかいないというこの男連中の中でも唯一“可愛い”と言える存在だ。


「まあそうだな……」顎に手を当て、アスタさんはしばらく考える。


「電話してきた奥さんも実際に現場を見たわけじゃないらしいから、様子見ってことで見張り的な感じで行こうと思う」


「それならアスタさん」


さっきまでおとなしくしていたはずのゼストが、口を開いた。嫌な予感がするのは私だけなのだろうか、他のみんなはいつもと変わらない表情だ。


「その見張りはこいつに任せれば俺はいいと思うんですが、どうでしょう」


その言葉とともに、私の頭にボスッとゼストの手が置かれる。


は? という私の心境を読み取ったのか、奴はこっちを見るなりニヤリ。


なんだその目は! なんだその、してやったりな顔は!


「どーせこいつ影薄いんですし、ちょっとくらい大胆にやってもその依頼人の旦那には見つからねーでしょう。依頼人の旦那も、探偵につけるられてるなんて思っちゃいねーでしょうし」


「はあ!? ちょっと何を勝手に――」
「なるほどな」
「いやアスタさんも勝手に納得しないでください!」


確かにね、私は影がこの上なく薄いですよ自覚してますよもちろんですとも。でもね、だからってどうして私がそんな昼ドラみたいなドロドロ現場を調べなきゃなんないの!?


私まだ16だよ?


そんな大人同士の問題は私のような未成年なんかじゃなくて、アスタさんやソウヤさんみたいな大人が解決すればいいってもんじゃないの?


「よし。じゃあルナに任せるとしよう」


アスタさん頷かないで! ていうか私の拒否権は!?


勝手に物事が決まっていくのはいつものことだけど、さすがにこの要件は呑めない。


「じゃ、決まりだな」ソウヤさんがまとめた。


「ゼスト、後でルナに伝えておいてくれ」
「ソウヤさん私ここです!」


もー! 結局私、またいないことにされてるし!!


「じゃあ今日はとりあえずこれだけだ。調査の方、頼んだぞー」


え?


コレ、結局私が追跡するパターン?


……なんてこった。