誰にも見えないその影を




「えーっと、うん。全員揃ったな」


私たちの住む『家』の二階には、みんなが集まる部屋がある。まぁいわゆる会議室ってやつね。


その壁の形に沿ってみんなが綺麗な円を成して座る。中心はもちろん、アスタさんである。


「じゃ、今日の要件なんだが――」アスタさんが話題を持ち掛けたところで、


「ストォォォォォォップ!!」というような大声を響かせたのは言うまでもなく私である。


理由はたった一つ。それも超簡単。


「まだ私が揃ってませんでしたよね!?」


そう。その会議とやらは、なんと私抜きで開催されようとしていたのだ! なんて酷い。


「女の子私一人なんだからそれくらい気づいてください!」


いやね。私の影の薄さはそりゃもちろん自覚していますよ。


でも!


いくら影が薄いからって会議にまでハブられるとか……それはそれでかなりの大ダメージなわけですよ。おわかり?


肝心のゼストはまるで知らん顔だし。何なのほんと。さっきはちょっと優しくなったかと思えば、今は他人事ですかああそうですか。


……覚えてろ。


キッとゼストを睨む。……あ、目が合った。


……あ。あっち向いた。最低。


――あいつ、いつか絶対痛い目に遭わせてやるんだから。


会議のときの私の席は、ゼストとソウヤさんの間。


私がそこに座ると同時に、私はバカゼストの二の腕をつねってやった。