誰にも見えないその影を




わけもわからないまま私はゼストに引っ張られ、さっき通ったばかりの廊下を再び歩く。


私とゼストの歩幅が違いすぎて気を抜いていると足が絡まってしまいそうなほどだった。


彼は一体なにをそんなに急いでいるのだろう。


さっきまでめんどくさそうな態度だったくせに。


ほんの数十秒歩いてやっと止まったと思ったら、そこはゼストの部屋だった。


すると彼は私の右手首から手を離し、机の引き出しを開けて何かを探し始めた。


「ねえ、何してんの?」


私がそう尋ねても、


「黙ってそこに座ってろ」としか彼は言わない。


答えになってないんですけど、と心の中で言いながらも、私は彼の言う通りに静かに待つことにした。