誰にも見えないその影を




何の自慢にもならないけれど、確かに私は人一倍影が薄いとは思う。


それは一応自覚しているつもりだ。


でも、だからといって毎朝私の腕をわざと踏む必要性はないはずだ。


そこが私の部屋だとゼストもわかっているわけだし、朝なら当然私がいるのだからなにも踏むことはないと思う。


私がじっとゼストを睨みつけていると、彼はめんどくさそうに短くため息をついた。


「……しょうがねえな」


その一言だけをぽつりと呟いて、彼は私の右手首を掴んだ。


「えっ! ちょ……何!?」