誰にも見えないその影を




「何のこと言ってんだか俺にはさっぱりだ」


予想的中。


こいつ――ゼストはいつもこんなふうにはぐらかす。


「女の子の腕にアザつけるなんて最低だからね。これのせいでみんなに嫌われたらどうしてくれんの」


「嫌われるどころか視界にすら入れてもらえてねーだろ」


「正論を言わないでもらえる?」


間違ってはいない。


だけどそれが余計に私を傷つける。


まあ彼にはそんな私のことなんてどうでもいいのだろうけれど。


私はため息をつきながらがっくり。


私が言いたいのはそういうことではないのだ。