誰にも見えないその影を




――ま、私の被害妄想かもしれないし、仕方ないから許してあげるわ。


感謝しなさいよね、と私以外誰もいない部屋でぽつりと言う。


布団もようやくたたみ終わり部屋の隅片付け、朝ご飯を食べに行くため部屋を出ようとする。


すると、


「わ……。アスタさん」


部屋の入り口のところで、私を拾ってくれた三人のうちの一人であるアスタさんとぶつかりそうになった。


「……いない。もうあっち行ったのか」


「いやいますけどここに!」


本日マックスのボリュームによる存在の訴えである。


朝からこれだけ大きな声を出したため、さすがにアスタさんも気がついた。


「……いや、今のはただの冗談で――」


「嘘つけ絶対気づいてなかっただろ!」


彼とこう言い合うのも、もう日常の出来事である。