誰にも見えないその影を




それに訴えようとしてもそうできない理由は、もう一つあった。


それは、住む『家』がなくなるということ。


親が忽然と消えてしまった私にとって、生きていける場所はこの『家』しかないのだ。


親のいない一人ぼっちだった私を拾ってくれたのはこの『家』のリーダー的存在のアスタさん、彼を最も信頼しているソウヤさん、そして――。





幼馴染のゼストだった。





彼らには恩がある。


彼らを失えば、私はまた一人になる。


それだけは、もうごめんだった。


せっかく一人だったところを見つけてくれた人がいるのに、それを自分から引き裂くことはできない。


あの瞬間は、とても嬉しかったから。