誰にも見えないその影を




「毎朝なんなの! あんたの朝は私を踏まないと始まらないわけ!?」


目の前にいる少年に二の腕を撫でながら怒鳴る。


しかし当の少年は、


「あ? 俺何かしたか?」


とぼけているのか本当に無意識だったのかは定かではないが、ぽかんとしている。


僅かに赤みを帯びたサラサラとした短い髪。


深いブラウンの大きめの瞳。


低めの落ち着いたトーンを持つ声。


彼こそ私の平和な朝の邪魔をする少年――ゼストである。