その瞬間を、私は信じられなかった。 「な……なんで?」 目を見開いて私は尋ねる。すると彼は 「なんでじゃねーよ。そんなに俺が嫌か。あーあ、お前を探して損した。つーかお前影薄いんだから勝手にどっか行ってんじゃねーよ」 お前を探す俺の身にもなれってんだなんて、わざとらしく少し機嫌が悪そうな声色で言う。 「え、でも……」 私が慌てて誤解を解こうとすると 「偶然だ」 私が言おうとしたことを見透かしたように、彼は短く言った。