……あー、最悪。朝からなんだか身体が重いと思ったら布団から出た途端に寒気がする。いやいや待て待て。まだ秋よ? 11月なんていう冬になる一歩手前だけれどもまだギリギリ秋だからね。


まあ季節のことなんかどうでもいいけれど――いやもしかしたら全然どうでもよくないのかもしれないけれど――つまるところ風邪である。季節の変わり目の風邪である。気温の変化はこれでもかというほどめんどくさくて、衣替えなんていちいちしてらんないわなんて言いながら秋物の服装で過ごしていたら冬になりつつある寒さに身体が悲鳴を上げてしまったらしい。うん、どうでもよくなかったな、季節。バリバリ関係してるなコレ。


とりあえず布団。分厚い布団が欲しい。毛布ならなおありがたい。布団までもが秋なのか夏なのかわからないような薄さだから余計に冷えていたのだろう。私としたことが朝晩と日中の気温の差というものをすっかり忘れてしまっていた。


「おいルナ、今日は仕事だっつっただろーが」ご機嫌斜めである様子をぷんぷんと漂わせながら扉を開いたのは言うまでもなくゼストである。


いやいやわかってますよ、早起きするつもりでしたよ。アラーム音だってちゃんと聞こえてますよ。……スルーしたけどさ。


「今日は無理ぃぃ……」身体だけでなく語尾までもがだるくなっている。


「はあ? お前サボる気か」


バカかお前は。私が仕事をサボるわけがないだろう。お前と違って私は至極真面目だわ。やる気満々だわ。


「うるさい今日はほんと無理なのー……」サボりたいわけじゃありません。休暇なるものがほしいんです。


「……何かあったのか」異変と言っていいのかどうかは定かではないがとりあえずいつもの私と何かが違うと感じたらしいゼスト。何かありまくりだわ。私の身体にウイルス入りまくりだわ。


「んーただの風邪。うつしちゃ悪いから、悪いけどあんた一人で頑張ってー……」


「風邪ぇ? 何だお前、バカじゃなかったのか」


いやそこかよ! 気にするとこ、そこかい! もっと私を心配しろよ彼女が体調崩してんだぞしかもお前の目の前で!


「……どこぞの誰かさんとは違って私はクソ真面目だから風邪にはすぐ負けるんですぅー」


「………………しょーがねーなぁ」深い深いため息をつき、そいつは言った。


「看病くらいしてやんよ」


これ以上になくめんどくさそうな顔で、でもどこか呆れていて、そのくせとても優しい顔をしている。こういう表現しかできないのは私の語彙力がないからかもしれないけれど、でも、本当にそんな顔だった。


「今日はおとなしくしてろよ、病人」


はいはい。おとなしくしてますよ。