いつから、こんな風になってしまったのかな。同じように産まれてきて同じように育ってきたはずなのに、私と“普通の人”との分岐点は一体どこにあったのだろう。
私の“影”は、どこに行ったのかな。
それさえあれば、私は“普通の人”と何ら変わりはなかったはずだ。持っていると思っていたソレが実はなくて、そのせいで私は親というものを失くした。失くしたというよりは親から捨てられたと表現した方がいいかもしれない。
……消えてしまおうか、いっそのこと。
一人だとどうしてもこう考えてしまう。バカみたいな思考だと私だってわかっているけれど、不覚にもそれを考えてしまう。私のいない世界は、きっと私がいるこの世界と何も変わらない。私が消えた。たったそれだけで大騒ぎする人なんて誰もいないし、気づきもしないのだろう。
誰にも迷惑をかけないで消えていくなんて本望じゃん、なんて思ってみたりもする。私がいなくなったところで気づく人なんて誰もいないんだから、迷惑も心配も何もない。むしろみんなが楽になる。
どこかにいるはずなのに姿が見えないなんてこともなくなるし、探す手間も省くことができる。メリットばっかじゃん。まあ言い換えれば、所詮“私”という存在はその程度のもので、みんなに負の影響しか与えないということだ。
バカみたい、ほんと。
バカな私だがら、さっきの家に続いて今度は公園に来てしまった。かくれんぼをして遊んでいた、あの公園。みんなに置いてけぼりにされた、あの公園。
ゼストがわざわざ探しに来てくれた、あの公園。
また、正体のわからない水が頬を流れる。『家』を出たときは真っ青に澄んだ空が遠くまで広がっていたはずなのに、いつの間にか分厚くていかにも重そうな黒い雲が青を隠している。そこから小さな粒が落ちてくる。
あのときと同じ雫。公園の遊具を、植物を、地面を濡らしていく。足は無意識にあのとき隠れていた場所に動いていて、気がつけばそこに座っていた。座れば梅雨に咲く紫陽花の葉に包まれて、ある程度の雨から逃れることはできた。
全部全部、消えてしまえ。目をつむって俯いて、唱える。
目を開ける頃には、私も、この植物たちも、この公園も、雨も雲も、家も、何もかも消えてしまえばいいんだ。
お願い。消えて。もう何もいらないから、消えて――。
降り続ける雫の音は、消えるどころか大きくなるばかりだった。



