【ゼストside】
リョウとかいうガキんちょが帰ってからもう二週間以上が経つ。ここ最近は仕事らしい仕事をこなしている間の時間はそう多くなく、あの子供がいなくなってからの時間は経過するのが早かったように思う。
ここの連中にもこの二週間で変化が出てきて、それは「ルナ、お前もいたのか」という発言が減ってきたことだった。まあなんたって俺が仕組んだことだからな、当然と言えば当然であるが。
どういうことかというと。
あの子供を父親に返した日の夜、俺はルナ以外の奴ら――つまりここで暮らす男共を全員集めた。
「なんだゼスト。こんな時間に集めやがって」
明らかに不機嫌な口調で言うのはソウヤさんである。ソウヤさんの言うこんな時間とは、夜中の1時を回った時間を指している。まあ確かに眠っているところを俺が無理矢理起こしたわけで睡眠を妨げられて不機嫌になるのはわかるが、今の俺にはそんなことどうだってよかった。
「――全員に守ってもらいたいことがある」
今から言うことは、今この『家』で暮らす俺たちの中で唯一の女子――つまるところルナについての話だ。こんな話をあいつ本人に聞かれるわけにはいかないのだ。かといって昼間はだいたい俺と行動しているから突然別行動をすると怪しまれる可能性がある。
というわけで、確実にあいつが眠っている時間を使ってこうして男共を集めたわけである。
「今後一切、ルナの前で『気づかなかった』とか『そこにいたのか』とか、言わないでくれ」
守ってもらいたい、というよりはもう懇願に近いものだった。もうたくさんなんだ。あいつは人一倍弱くて、そのくせ頼ることを知らなくて、一人で悩んで抱え込んで……。消えてしまえばいいなんていう極端な考えに至ってしまうバカな奴なんだ。
気づかなかった、お前もいたのか。もうここに来て10年以上は聞き続けたであろうその言葉。何度傷ついたか、きっともう本人にもわからないと思う。
「……そんなことだろうと思ったよ」
成人を迎えた五人のうちの一人――ライアさんが言った。真っ黒な髪に黒縁眼鏡をかけ落ち着いた雰囲気を漂わせるその人はなんとここにきて初登場なのだが、まあそれは置いておくとして。
「最近のお前は嘘みたいに人のことを気にかけてたからな。その相手がルナだってことに気づかない奴はいないだろ」
ルナの存在を認識できない奴が何を言っているんだかと思ったけれども、ルナがこの『家』にいることは一応認識しているらしい。影の薄さにより単に姿が見えないということのようだ。
「それってつまりそういうことでしょ?」ニコニコと笑いながら言ったのはシフォンである。
この言い方。どうやら何がどうなのかという細かなことは必要ないらしい。
「そういうこった」
納得したような表情とシフォンみたくにこやかな表情の入り交じったそいつらの顔は、なんだかとても頼もしく見えた。



