最後の部屋を探す。探すと言っても、もう隠れる場所なんて押入れくらいしかない。この部屋に入るや否やゼストは何の躊躇もなくその押入れの扉を黙って開ける。
そこには膝を折り曲げて抱えて座るリョウくんの姿があった。顔はその膝の中に隠し、それはまるでゼストに感情を悟られまいと足掻くあのときの自分を見ているようだった。
「はい見っけ。ほら、早く出ろ」
心なしか彼のリョウくんへの態度が冷たくなっているような気がする。この三日間での時間をかき消すような、そんな冷たさだ。けれどもそれは、きっとゼストなりに「お別れ」ということを理解したうえでの態度なのだろう。
「リョウくん、おいで」
右手を伸ばし、縮んで震える少年の頬に触れる。親指が少し湿ったのがわかった。私自身も特にここ数ヶ月はよく流した、それ。
たった三日。されど三日。リョウくんにとってもゼストにとっても私にとっても、この三日間というものは想像以上に長くて、それぞれの日常とやらに変化をもたらしたらしい。
「お父さんが待ってる。ね、帰ろう」
「…………やだ」少年は頑なにその場を動こうとしない。
「こんなとこにいても何の意味もねーだろ。帰れ」ゼストも加わる。
「やだ……!」
帰れと嫌だの言い争い。このままだとゴールなんて永遠に見えてこない。彼のお父さんももう10分以上は待たせてしまっているし、早くリョウくんを返してあげないと困らせてしまう。
「おいルナ」どうしたものかと悩んでいると、リョウくんを説得していたはずのゼストが私に向かって言い出した。
「お前、こいつの父親にもうちょい時間がかかるって伝えてこい。あと俺がいいって言うまでこの部屋に戻ってくんな」
「はぁ……?」
何がしたいのかよくわからないけれど、そんな命令口調で言われてしまったら断れない。彼なりに目的はあるのだろうけれど、それが全然見えないのだから何とも言い難い。
仕方ない。どうやって説明すればいいのかなんてわからないけれど、まあリョウくんのことはゼストが引き受けてくれるみたいだし、やれるだけやってみよう。
「……わかったわよ。じゃあリョウくんのことはお願いね」
おー、という短い返事を受け取り、私はその部屋を出て少年の父親が待つ玄関へと足を進ませた。リョウくんが出てくるまでの時間稼ぎ。私にそんな大役が務まるとは思っていないけれど、まあ頑張ってみよう。



