手当たり次第に部屋を回りながらリョウくんを探していると、インターホンが鳴った。たまたま近くにあった壁時計に目をやると、午前11時を少し過ぎた頃だった。お客さんが来るにしてもなんだか中途半端な時間である。
「俺が出てくる」
ゼストはそれだけ言い残して玄関へ方向転換。他の人に任せてしまえばいいじゃんと思ったのだけれど、そういえばと今さらながら思い出す。今ここには私たち以外にいないんだ。みんな何かしらの仕事で外出しているのだと気づく。
私が昨日は精神的におかしくて、だから少し休めとゼストを通じてアスタさんとソウヤさんから命じられた。ゼストは私のついでだと言う。おまけ扱いされていることには笑ってしまったけれど、嬉しいことに間違いはなかった。
リョウくんを探しながらゼストが戻ってくるのを待っていると、
「あのガキんちょ、まだ見つかんねえのか」
ぱたぱたとゼストにしては珍しく足音を立てながら帰ってきた。少し慌てているようにも見えるのはどうやら気のせいではないらしい。
「なに。どうしたの」何をそんなに焦っているのかがわからなくて、尋ねた。
「あの子供の親父が迎えに来た」
「えっ……でも予定では夕方のはずでしょ? いくらなんでも早すぎない?」
「今日の分の仕事が思ったより早く終わったんだとよ」
「……わかった」
早く終わることは決して悪いことではない。リョウくんにとってはむしろいいことだ。大好きなお父さんと一緒にお家に帰ることができるのだから。でも、それなら仕事が終わった時点で「迎えに行きます」くらいの連絡を入れてほしいものだ。
「リョウくーん、お父さんがお迎えに来てくれたよ」
ほとんどの部屋を探し回っても見つからなかった。隠れることができる場所はもう少ない。選択肢も限られてきている。早く見つけてあげないと。
「…………だ」
どこからか、リョウくんの声が聞こえた。何を言っているのかまでは聞き取れなかったけれど、それがリョウくんの声であることははっきりとわかった。近くに隠れているはずだ。
「リョウくん、どこー? お父さんが待ってるよー」
「や……! ………………ない」足を進めるにつれてリョウくんの声もだんだんと輪郭を帯び始める。
「お前、わがまま言ってんじゃねーぞ」
まるでリョウくんの言葉を全て聞き取っているかのような口ぶりでゼストが言う。……なんとなく、わかってしまった。
なんてこった。厄介だなあ、もう。



