「じゃあ僕はあっちに隠れるから、ルナは別のところ探してね!」
「声がでかいって。鬼に聞こえたらどうすんの」
「そのときは、僕のことはいいからルナが先に見つかってて」
いや逆ぅぅぅ!! え? 普通は「僕のことはいいからいい場所に隠れてて」とかそんなんじゃないの!? 何なのコレ。万が一のときは私が犠牲になるパターンですか! 身を挺して俺を守れと、そういうことなんですかお坊ちゃま!?
「ルナが先に見つかってあげないとお兄ちゃんが心配しちゃうでしょ」
「なっ……!」
無邪気な顔で、きっと深いことは何も考えていないのだろう。確かになんだか最近はゼストと一緒にいる時間が長かったし、そういう意味でこの少年はそう言ったのだと思う。けれども“あんなこと”があっての今だ、子供相手に深読みしてしまう自分が一本取られた気がして少し悔しい。
「でも大丈夫だよ」笑顔を絶やすことなく少年は言う。
「だってルナ、探偵だもん。上手に隠れられると思うよ」
私ってば、なに励まされちゃってるんだろう。会話の相手は子供よ? なんか、ただの気のせいであってほしいのだけれど、自分の全てが筒抜けになっている気がしてならない。
そういえばそういうこと、前にもあったようななかったような……。あれはいつだったか、情報屋の三人と鉢合わせてしまったときだったっけか。
「ずっと遠くを見ている」なんてどこにでもありふれた言葉なのだけれど、どうしてかあのときのリョウくんのそれは私の感情の全てを読み取ってしまったもののように思えた。まあそれもきっと、私の考えすぎであることには間違いないのだろうけれど。
「言っとくけど、ゼストだって探偵なんだからね」
しかもこんな影の薄い私を人間で溢れた街中で容易に見つけてしまうんだから、隠れる側の私たちにとってはとんでもない強敵である。
「うん、知ってる」もう既に笑顔だったのにそれをさらに咲かせて少年は頷いた。
「隠れるのが上手なルナと見つけるのが上手なお兄ちゃん。楽しそうでしょ?」
僕はお兄ちゃんが勝つと思うけど、と少年。こいつ、この私をまんまと敵に回しちゃったよ。そこまで言われたのなら勝たなきゃなぁ。言われるだけじゃ悔しすぎる。
見つけてもらえるまで時間がかかるとなると昔のことを思い出してしまって確かに怖いけれど、でも相手はゼストだから。『あのとき』に一緒に遊んでいた鬼とは違うから。どこに隠れていたって、ゼストならちゃんと、見つけてくれる。不思議とそう確信できる。
「誰が誰に負けるって?」にっと不敵な笑みをして見せる。
「余裕勝ちしてやるわ」
ゼストだからという理由一つでここまで安心できてしまうなんて、やはり私はなかなかの重傷を負っているようだ。



