誰にも見えないその影を




かくして始まった、参加者はゼストとリョウくんと私の三人だけというかなり小規模なかくれんぼ。ルールはご存知のとおり至極簡単。誰か一人だけが鬼になって、隠れた人を見つけ出す。たったそれだけの遊び。


けれどもそれは。


あまりにも存在感が薄すぎて子供の頃に一度も、そして誰にも見つけてもらえなかった私にとっては、この上ない不安と恐怖を感じさせる遊びである。


鬼を決めるじゃんけんをして、私とリョウくんがパーを、ゼストがグーを出した結果、ゼストが鬼を務めることになった。考えすぎかもしれないけれど、嫌な予感しかしないのは私だけのような気がする。


「瞬殺だな」


にやり、と隣で何やら愉しそうに怪しい笑みを浮かべる幼馴染。いや瞬殺って何よ。子供の前でそういう怖い言葉使うなや。覚えちゃったらどーすんのよ。


「お前ら共々一瞬で見つけてやらぁ」


こいつ……顔がマジだ!! 幼い子がいるってのに楽しむ気ゼロだよ!


「じゃあ絶対にお兄ちゃんに見つからないように隠れる!」


嬉しそうにニコニコと返すリョウくん。見つからないように、か……。どんなに長い時間が経っても見つけてもらえないことがどれだけ寂しくて怖いのかということをわかっていないんだろうな、なんて考えていると。


「ね、ルナ! 早く隠れよう!」


「え? あ……うん」


テンションMAXではしゃぎまくるリョウくんに手を引っ張られ、そして私の思考は遮断された。


絶対に見つからないような場所なんてこの『家』にはどこにもない。それはリョウくんだってわかっていると思う。ただ見つからないように上手に隠れる。そういう意味であんな言葉を言ったのだろう。


隠れるのが下手でも見つけてもらえなかった私は、見つけられないまま忘れ去られていた私は、どうすればいいのだろう。


私の腕を元気に引っ張り、前を無邪気に走る少年の背中はとても小さくて、でも。


どこか『彼』に似ている――。


自分勝手な想像で重ねてしまっているだけかもしれないけれど、どうしてか、似ていると感じてしまう。そして次第にたくましくも見えてくる。きっとこの少年も、成長すれば彼のようになるのだろう。


うざい部分をいい塩梅で残しつつ、けれどもそんな部分まで愛してくれる人が現れて、なんだかんだ言いながらもその人を大切にする。


そんな男性に、この少年はきっとなる。私にはわかるよ。彼と同じ背中をしているもの。この背中に何度頼ったか、何度安心させられたか知らないくらいにね。