誰にも見えないその影を




12時30分過ぎという、お昼をするにはちょうどいい時間だったため、私たちは偶然近くにあったとあるカフェにやってきていた。


誰の希望かといえば、まあ……うん、言わなくてもきっとわかるよね。リョウくんだ。看板に貼られたスイーツの写真を見て「僕、あれ食べたい! つれてけルナ!」ともう大興奮。口の悪さはまあ黙っておいてあげるとして、やっぱり子供なんだと改めて認識した。


「カフェとか……落ち着かねえ」


日常的にカフェなんていうおしゃれなお店には立ち入らないゼストはその言葉の通り落ち着かないようで、文字通りそわそわしている。


「文句言うなバカ。リョウくんの希望なんだからね」


なんて言う私だけれども、ぶっちゃけ私だってこんなキラッキラしたお店になんて入ったことがないため居心地はあまりよくない。だけどしょうがないじゃん。なんたってリョウお坊ちゃまのご希望なんですもの。


そんなときだった。


「あ、さっきの子見っけ!」


突然、聞き覚えのある……ていうかさっき聞いたばっかの女の子の声が聞こえた。ていうかもうめんどくさいから言うね。ハツネちゃんです。


……ん? ハツネちゃん?


え、ちょっと待ってなんでこんなカフェでまた会うの。だってさっき、ハツネちゃんたち三人組は私たちとは正反対の方向に別れてったじゃん。なんで同じ場所にいんの。どうなってんの。


「あり、なんでお前らこんなとこにいんの」シドさんがひょっこりと顔を出して言う。


いやそれこっちの台詞ゥゥゥ! 私たちこっち方面に進んだんだからここにいて当然だろーが! ていうかたぶんこの人の中での「お前ら」に私は入れてもらえていないんだろう。いや絶対。


「ストーキングとはまた悪趣味なこって」涼しげに、そしてなんてことないような顔で返すのはゼスト。


いやいや待って。何なのこの二人の会話。え? ゼストあんた、もしかしてシドさんたちがついてきてること知ってたの? そういう言い方してるよね? そう解釈してもいいってことだよね?


「すみませんゼストさん」謝るのは左目付近に黒くて大きなマスクのようなものを身に付けたシュンタくん。いつだって彼の役割はこれだ。可哀想に。


「僕は止めたんですけど……シドさんとハツネちゃんが探そうって」


いや探すって何!? 怖いんですけど何なのマジで!


「ストーキングじゃねえからな、断じて」一方シドさんは謝るどころかすんばらしいドヤ顔でそう断定する。


「他人に興味なさそうな少年がガキんちょなんて連れてっから、そのガキんちょを心配して来てやっただけだからな」


……うん、まぁその気持ちはわからなくもないけれども。