「あれ。探偵んとこの少年じゃん。こんなとこで子供連れて何やってんの?」
どこかで聞いたことのある声が聞こえた。その声を追うと、情報屋の三人組がそこにはいた。ていうか彼らにも私の存在はやはり気づいてもらえないようだ。
「シドさんじゃないですか。情報屋三人そろってそっちこそ何やってんですか」
相変わらず涼しげな顔で、質問を質問で返すゼスト。三人の真ん中にいる人物――シドさんとは性格も割とよく似ている。
例えば仕事に対するやる気のなさとか、物事を自分の都合のいいように持っていくところとか、私への当たりが最低なところとか。
でも、どうしてかゼストのことになると許せちゃうんだよね。それが“好き”ってことなのかな、なんて考えてしまう私はなかなかの重症だと思う。
「この子供、誰? 超可愛いんだけど何コレなんでこの子こんなに天使なの?」
リョウくんを見て目をキラキラさせているのはハツネちゃん。サラサラとした茶色のロングヘアにスワロフスキーでできたライトブルーのアクセサリーを身に付けているおしゃれさん。同性の私から見ても可愛いと思うのだから、きっとこの子はモテるに違いない。
「ルナたちと遊んでもらってるんだ! いいだろ!」
満面の笑みでハツネちゃんに答えるリョウくん。彼が私の名前を出したことにより、
「あ、ルナさん。こんにちは」とようやくシュンタくんに認識してもらえた。
「おー、ルナもいたの」これはシドさん。
「ホントだ! 久しぶりだね、ルナ!」これはハツネちゃん。
「…………はいはいどーもご無沙汰しておりますー」
……うん、なんだろうこの敗北感的なやつは。なんか地味につらい。私、リョウくんに名前を出してもらえてなかったら絶対に気づかれないままだったよ。リョウくんありがとうマジで。君の無邪気さに初めて感動したよ。いやホントに。
「え、何? このガキんちょ、もしかしてお前ら二人の……」
「違います!」
そこは即座に否定させていただきます! つーかまず年齢を考えようか、シドさん。私まだ16歳だからね。結婚なんて……あ、もうできちゃうじゃん。いやでもまだするつもりなんてないし、そういうことだって私にはまだまだ早すぎる。
「預かってるだけです。お願いですから変な勘違いしないでください」
「変な勘違いって何だよ。もしかしてお前、そういうこと考えて――」
「あーシドさん」
私がシドさんの言葉にキレかけようとしたそのとき、ゼストが彼の言葉を遮った。
「俺らこのガキの世話しなきゃならねえんで、ここらでさよならとさせてもらいますよ」
ほら行くぞ、とゼストはリョウくんの手を引き、それにつられて私も歩き始めるのだった。



