飴とノイズと君の声

「...っていうか、琳ちゃんさんって」


琳ちゃんさんはそう言っておかしそうに笑う。


「え、あ!ごめんなさい!」

「いや、いいよ。なんか丁寧だなぁって思って」


琳ちゃんさんはそう笑って言って、私に近づく。


「春宮さんの下の名前って、風歌さんだよね」

「あ、はい」

「じゃあ、俺もちゃん付けで呼んでもいい?」


その言葉に、私は少し驚く。
ちゃん付けって...琳ちゃんさんのファンの人、嫌じゃない?


「そーだなぁ...ふーちゃん、とか」

「ふーちゃん...ふふ、なんか可愛いですね」


聞いた呼び方が、今までされたことがない可愛い呼び方。
私は少し、笑って頷いた。


『...春宮さんは、ずるいよ』


「えっ...?」

「ん?ふーちゃん、どうかした?」

「あ、いや...」


今、琳ちゃんさんの声が聞こえた。

私がずるいって、不機嫌そうな、でも少し寂しそうな声で。


「あはは、変なふーちゃん」

『俺だって...春宮さんみたいに...』


立て続けに聞こえてくる、琳ちゃんさんの声。

それに、心の中では、私のことを春宮さんって呼んでるみたい。