君に恋していいですか?

「そうですかぁ…?絶対キレイだと思うんだけどなぁ…。喜ぶと思いますよ、笠松さん。」

「えぇっ?!」

(な…何言ってんの?!)

「ごめん、やっぱりいい!!お疲れ様!!」

薫は逃げるようにして足早に更衣室を出た。

思ってもいなかった事を言われ、妙にドギマギしてしまう。

(なんで私が笠松くんのために化粧する必要があるの?それに…笠松くんはそんな事、喜んだりしないよ…恋人でもないのに…。)

自分でそう思っておきながら、“恋人”と言う言葉にまた変にドキドキして、薫は顔を真っ赤にした。

(だから…そんなんじゃないから…。)

薫は慌てて女子トイレに飛び込むと、個室のドアをバタンと閉めてドアにもたれた。

いつもより速い鼓動を抑えようとするかのように、両手を胸に当てて目を閉じた。