やっと始まったと思ったのに、少し進むと振り出しに戻されてしまう。

進みたくても進む事ができない。

だけど、このまま何もしないで、この想いが枯れて行くのを待つのもつらい。

(どうすれば、オレの事を一人の男として見てくれるんだろう?)

他に好きな人や彼氏がいると言うわけでもないのに、薫があんなに頑なに恋愛を拒む理由はなんなのだろう?

(もしかして、ただオレの事が好きじゃないからそう言っただけなのかも…。)

志信はコーヒーを飲み干して、手の中でカップをくしゃりと握りつぶした。

(オレはこんなに好きなのにな…。)

好きだと言う気持ちと、それを理由に遠ざけられる寂しさ。

仕事中には見られなかった薫の笑顔やふてくされた顔、照れた顔が、次々と浮かんだ。

どうにもならない薫への恋心が、志信の胸をしめつける。

(やっぱり…会いたい…。)