もう若くはないのだから、もしも次に誰かと恋愛をするならば、将来の事も考えなくてはならない年頃だ。

(こんな女らしさの欠片もないような私を好きだなんて言ってくれる物好きな人、いるとは思えないもんな…。)

ふと、志信の顔が浮かんだが、薫はそれを振り切るように頭からシャワーを浴びた。

(ないない…絶対ない…。社内恋愛なんて、二度としないんだから。)

せっかく仲良くなれたのだから、志信とはこのまま貴重な同期の仲間でいたいと薫は思った。

(同期の仲間としてなら、恋愛みたいに終わる事はないもんね。)

志信から急に“女の子”扱いされた事や、突然目を見つめられ手を握られた時は、正直少し戸惑った。

(きっと、深い意味なんてない…。)

もう何年も忘れていた、ほんの少し甘い心の疼きを気のせいにしてしまおうと、薫は心の奥にしまい込んだ。