あれから2週間。

薫はいつものように出勤し、何事もなかったような顔をして日々の仕事をこなしていた。

仕事が終わると真っ直ぐ家に帰り、一人でビールを飲む。

“もう誘わない方がいいかな”と言う言葉通り、志信からはなんの連絡もなく、会社で顔を合わせる事もない。

浩樹に“もう一度付き合って欲しい”と言われたまま、ハッキリとした返事もしていない。

もう何年も前に終わった恋だと思っていたのに、急に目の前に現れて今でも好きだと言った浩樹を、今更信じられるわけもない。

それなのに、ハッキリと拒絶する事もできなくて、薫は自分で自分の気持ちがわからなくなっていた。

別れの言葉もないままに終わった恋は、いつまでも薫の心にしがみついて、忘れる事も、新しい恋に踏み出す事も許してくれない。

(そもそも、新しい恋なんて始まりもしなかった…。)