「おたくの卯月くんは、いつもあんな感じ?」

上田部長が尋ねると、青木部長はおかしそうに笑った。

「いい子でしょう。人一倍真面目に働いて、期待された以上の仕事をキッチリこなす。おまけに上司や先輩だけでなく、後輩に対しても礼儀を大事にするんです。」

娘を見るような優しい目で薫を見ている青木部長に対して、上田部長は少し怪訝な顔をする。

「でも愛想はないね。かわいげとか。」

「愛想やかわいげだけじゃ、あんな大変な仕事は務まりませんから。確かに少し無愛想な気もするけど、現場での評判はものすごくいいんですよ。」

「それは社員から?客から?」

「マネージャーからもスタッフからも、信頼されてますよ。お客さんからの評判はバイト時代から今に至るまで安定して素晴らしいです。」

「あぁ…。卯月くんは7年も山寺SSでバイトしてたんだってね。」

「ええ。私、その時マネージャーやってましたからね。よく知ってるんです。男性社員より仕事が出来る子でね。だから私がSS部の部長になった時、人事部に掛け合って彼女をSS部に引き抜いたんですよ。」

青木部長の言葉に納得したのか、上田部長はうなずきながらチラリと薫を見た。

「なるほどねぇ…。仕事は男以上に出来るとなると…余計に男は逃げるだろうね。」

「それはどうですかね。そこは私らには手の出せない領域ですから。」

「手の出せない領域?」

上田部長が首をかしげると、青木部長はビールを一口飲み込んで、ハッキリと言い切った。

「職場に私情は持ち込まない子なんです。」