君に恋していいですか?

自宅に帰りついた薫は、シャワーを浴びて、冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

ビールを飲みながら、タバコに火をつけ、ぼんやりと今日の出来事を振り返る。

(なんか…ちょっと、疲れたな…。)

せっかく志信がお祝いをしようと優しい事を言ってくれたのに、少し素っ気なくしすぎたかなと思う反面、でもこれ以上近付かないようにしようと決めたのだからこれでいいとも思う。

(私にも長野さんにも、後輩にも、きっと誰にでも優しいんだよね、笠松くんは…。)

恋人でもない女の子に、わざわざ誕生日のお祝いをしてあげる志信の性格を考えると、きっとたくさんいる知り合いの女の子にもそうしているのだろう。

(女の子にお願いされたら断れない…とか…。それこそ、彼女がいても別の子に付き合ってって言われたら断れずに二股とか…。優しいふりして傷付けるんだよね、そういう男って…。)

志信の事をよく知りもしないのに、きっとこういう人だと、心の中で志信を“自分が絶対好きにならない男”に仕立てあげた。

(裏切られて泣くのはもう嫌…。)

あんなに好きだと言って何度も抱いたくせに、ひどい捨て方をした浩樹の事を思い出して、薫の胸はまたズキズキと痛んだ。

(私にはもう関係ない…。あの人は、もう他の誰かの夫で…その人との間にできた子供の父親で…。最初から私の事なんて、どうでも良かったんだから…。)