「貴様ら、俺を誰だと思ってる。これがただの飾りの剣かどうか、今見せてやるよ。この瑞歯別(みずはわけ)のをな!」

瑞歯別皇子(みずはわけのおうじ)はとても恐ろしい笑みを見せた。

「瑞歯別って、お前まさか瑞歯別皇子か!あの残忍で知られている」

男達がそう言った瞬間、皇子は男達に切りに掛かって行った。

男達も慌てて瑞歯別皇子に襲いかかるが、皇子は剣を巧みに扱って、男達1人、1人を斬りつけていく。

「瑞歯別皇子、何て強いの……」

佐由良は思わず、瑞歯別皇子の戦いに見入ってしまっていた。

「くそ、こうなったらそこの女を人質に取って」
 
男の1人が、佐由良を捕まえようとした。  

「きゃー!来ないで!!」

佐由良の声を聞いた瞬間、皇子は向きを変えて彼女の方に行った。

「佐由良に近づくな!」

瑞歯別皇子は、佐由良を捕まえようとした男の肩を、後ろから剣で刺した。

「くそ、貴様ー!!」

男は佐由良の前で倒れて、激痛に苦しんでいる。

(しかし、俺一人でこの人数は流石にしんどい……)

瑞歯別皇子が、1人の男を相手にしている時、後ろから皇子に別の男が襲い掛かって来た。

「皇子、後ろ!」

瑞歯別皇子はギリギリで攻撃を受け止めたが、肩に少し傷が入った。

「く、くそ」

(皇子が、どうしたら……)

その時だった。 
何体もの馬が走ってくる音が聞こえて来た。
稚田彦(わかたひこ)、こっちだ!」

稚田彦達が何とかギリギリ間に合ったようだ。

瑞歯別皇子達の前まで来た稚田彦は、皇子を見て言った。

「皇子、よく1人で持ちこたえましたね」

「そんな話しは後だ。この連中を捕まえるのと、向こうに娘達が捕まってる。早く助けてやって来れ」

「分かりました。急いで取り掛かります。皇子はここで休んでいて下さい」

そう言って、稚田彦は男達の取り押さえと、娘達を助けるべく動き出した。

瑞歯別皇子は近くの木に持たれて、「はぁーはぁー」と息を切らしていた。

佐由良は思わず瑞歯別皇子の元に駆け寄った。

「皇子、大丈夫ですか!」

彼女は目に沢山の涙を浮かべていた。

佐由良が側に来ると、瑞歯別皇子は思わず彼女を抱きしめた。