魔法使いの一日



「ちょっとまったあぁあああぁぁああ!!!!」


ピタッ…


 私が大声で制止をかけた瞬間、振り下ろされるナイフはピタリと止まった。


「あのー、ちょっとナイフを振り下ろすのは待ってくれないかな?」

「は?」


 その発言にアルベルト君は間の抜けた声を出し、ソラはキョトンとした表情をしていた。


「あ……もしかして、命乞いってやつ?」

「そんなわけあるかっ。もう覚悟はできたよ。ただ、この金縛りを解いてほしいの。もう逃げたりしないし、いつまでも動けないっていうのはやっぱり嫌だから」

「!? 亜梨珠!!?」

「へー、潔いな。まあそれくらいいいか、どの道どこにも逃げられないんだし」

「だから逃げないって言ってんじゃん」


 睨み付けながらため息を吐くと、アルベルト君は指を鳴らす。と、金縛りがとけ自由に動けるようになった。私は確認の意味で手を握ったり開いたりする。うん、ちゃんと動く。


「さあ、どっからでもかかってこーい!」


 腰に手をやり胸を張ると、ソラはかなり慌てだした。


「ちょっオイ、亜梨珠!! 何バカな事…」

「ソラは手を出さないで。アンタが入ると只でさえややこしいのに、更にややこしくなるから」


 キッと睨み付け、そしてフッ…と笑った。


「そんな心配しなくても、大丈夫だよ」

「亜梨珠…っ」

「そうそう、遅かれ早かれお前も同じ末路を辿るんだからな」


 アルベルト君は口元に弧を描き、ナイフを振り下ろした。私は目を瞑り―――……