*完結* 星野と高瀬のばあい

こういう波の音、しおさいっていうんだよな、


プロポーズのち、なぜか波の話。

波がくり返し、重い音をたてている。潮が満ちている。

「知ってる? 朝のしおを潮って書いて、夕方のしおは汐って書くの。日本語ってよくできてるよな」

高瀬が携帯で、漢字を変換してみせる。

「へえぇ」

「だからこの時間のしおさいは、汐騒が正しいんだよな」

「よく知ってるねえ」

「調べたんだよ、好きな子の名前だから」


しおさと汀。
自分たちの父親であるアメリカ人は、海軍だったらしい。だから海にちなんだ名前をつけたのだろう。母親の未練がましさが、にじんでいるような名前。


「ここ感動するところだろ」

高瀬がすねたようにくちびるをつき出す。