*完結* 星野と高瀬のばあい

水を入れたビニール袋を手にさげた小さな男の子が、小走りにそばを通る。まだ収穫はないようだ。
ふと思いついて、声をかける。

「ねえねえ、そこのボク」

知らない大人に声をかけられたからだろう。きょとんとした顔で立ち止まる。

「いいものあげる」

バケツからヤドカリをつまみ上げる。

「ヤドカリだよ」

袋に入れてやると、顔をほころばせる。

「じゃあ俺は、カニあげる。いちばん大きいやつ」

ありがとうと、目を伏せたまま口にする。


いつもなら、こんなふうに言い出すのは高瀬の役回りなのだが。

よかったね、役に立って、
だな、

気持ちが優しくなっている気がする。自然に帰るというやつなのか。