それでも、つやつやとあめ色に輝くパイが、オーブンから取り出される光景を思い出すと、胸の奥がじんわり温かい。
母親が彼と別れてから、絶えて焼かれることのなくなった、ミートパイ。
この日本では、パイといえばデザートにあたる甘いパイが主流だと知ったときには、ちょっとしたカルチャーショックだった。
そんな思い出話を、高瀬にしたことがあっただろうか。
彼と自分が過ごしてきた11年の年月。当然、膨大な量の言葉を交わし、記憶を共有している。
地層のように堆積した記憶たちのどこかに、ミートパイが埋まっていたかもしれない。
高瀬というやつは、しおさ自身とうに忘れていたようなことを、丁寧に掘り出しては、土や汚れをはらい、得意げに差し出してくるところがある。
しおさにとっては取るに足らないものでも、彼にとっては大切なかけがえのないものであるかのように。
記憶にあるミートパイと似ているような、違うような味のするパイをかじる。
おいしい、とつぶやく。
母親が彼と別れてから、絶えて焼かれることのなくなった、ミートパイ。
この日本では、パイといえばデザートにあたる甘いパイが主流だと知ったときには、ちょっとしたカルチャーショックだった。
そんな思い出話を、高瀬にしたことがあっただろうか。
彼と自分が過ごしてきた11年の年月。当然、膨大な量の言葉を交わし、記憶を共有している。
地層のように堆積した記憶たちのどこかに、ミートパイが埋まっていたかもしれない。
高瀬というやつは、しおさ自身とうに忘れていたようなことを、丁寧に掘り出しては、土や汚れをはらい、得意げに差し出してくるところがある。
しおさにとっては取るに足らないものでも、彼にとっては大切なかけがえのないものであるかのように。
記憶にあるミートパイと似ているような、違うような味のするパイをかじる。
おいしい、とつぶやく。



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)