*完結* 星野と高瀬のばあい

パイを一口かじった高瀬が、「あひっ!」と口元をおさえる。

彼の飲み物は、ホットコーヒー。
思わず、手に持ったアイスラテを差し出した。

あんがと、口の中でつぶやいて、高瀬がラテをすする。

「あー、熱々、でもうまい」

しおさも用心しつつ、ミートパイに歯をたてる。
カリッと香ばしく焼けたパイ生地の中から、スパイスの香りがはじけ、透明な肉汁があふれだす。


幼い頃、しおさにとってパイといえばミートパイのことだった。

めったにやって来ない父親と祝うことができた特別な日、クリスマスとか誰かの誕生日とか。
そんな日には、母親は必ずミートパイを焼いた。

今にして思えば、市販のパイシートにミートソースを詰めた程度のものだったんだろうけど。