誰かがアスファルトに巻いてくれた水があっと言う間に水蒸気となる。


私はそれを見つめながら、息を静かに吐いた。


「何がいけなかったんだろう ?」


照り付ける真夏の太陽がジリジリと露出した肌を小麦色へと誘う(イザナウ)。


指先には一枚の紙切れ……


真ん中には『不合格』の文字が揺れている。


私は小さいけど地元では有名なダンスホールでトップダンサーとして踊っていた。


誰にも負けない自信があった……


都会でのビックチャンスに心を踊らせた。


………なのに


オーディション結果聴きに行った場所。

いつもなら輝いられる場所も今日は漆黒の闇に閉ざされた感じがしたからホールの扉を見ないようにしていた。


悔しい……



そんな気持ちでバス停のベンチから動けないでいると、誰かが近付く気配がした。


私は急いで紙切れを鞄に押し込んだ。


目の前に立っていたのは、同じダンスホールの目立たない脇役男。

背も高くない。
顔だって、踊りだっていまいち。


そんな彼が私の手を引き歩き出した。


「ちょ、ちょっとぉ〜」


連れてこられたのは、漆黒のダンスホール。


彼は舞台にライトを付け踊り始めた。


何も言わずに……


始めは下を向いていた私だけど、いつの間にか彼を見ていた。


彼はわざとおどけてみせる。

思わず吹き出してしまった。

私に笑顔が戻ると、彼はニカッと笑ってラストを決めた。


綺麗だった。


いつも隅で踊る彼になんて興味がなかった自分を恥じた。


最後まで何も言わない彼に、私は無言の涙でお礼を言った。



でも、ほんの少し彼に貰った勇気を無駄にしないようにまた前を向いて歩こうと決意を新たにした。

  =fin=