『………君の手が僕の手を拒んだあの日、目の前の空はただ白く輝いていて、春の太陽の光がやけに眩しかった…………』


そんなことをぼんやりと考えながら、僕は一枚の絵葉書とにらめっこをしていた。


風を心地よく吹かせていた朝も、気がつけば額が汗ばむ昼へと時間を変えていたほどに……


季節は夏。


葉書に書いた言葉は『暑中見舞い申し上げます』ただ1行……


桜の蕾が膨らんだ頃に、僕の手を離した君。


無邪気に笑う君の髪が肩下まで伸びて、白いタンクトップと麦わら帽子が似合う素敵な女性に変わったと誰かが教えてくれた。


そうだきっと、僕じゃない誰かが君を変えたんだね……


『お元気ですか?』


白い雲と眩しい太陽が描かれた葉書に、ありきたりの文字を並べる。



まだ書き足せない言葉がある……



そんな思いを打ち消すように鳴き叫ぶ夏を満喫するセミたち。



その声に後押しされて、赤いポストに葉書を投げ込こんだ。



もうこの街にはいない君に最後の願いをこめる。


宙ぶらりんの僕の心は空っぽで、飛行機雲がただ、ただ綺麗で……



もう届かない『好き』という気持ちを散らしながら、僕は額の汗を拭った。



大人になれない寂しさとともに……




=fin=