厨房で下女たちに恐縮されながら、空の盆と温かな香茶、そして少しばかりの果実が盛られた器を交換する。

 そのまま両手にそれらを抱え、ラザーが向かうのは王宮の一角にある白い塔だった。

 ラザーと擦れ違うたび、侍女たちは微妙に同情めいた視線を彼の背に投げ掛ける。

 玉座に一番近い場所からの転落と云う悲劇を背負った青年への憧れと、憐れみ。

 ――意味のない、心得違いをした女ども。

 淡い笑みを仮面のように装って、ラザーがそう嘲っていることに彼女らは気付かない。