身体を丸めるウルジャスの前で、その音はぴたりと止まった。

「ウルジャス様」

 耳からではなく、もっと芯に近い場所に忍び込む美声。

 その声が紡ぐ自分の名前が、ウルジャスは大嫌いだった。

「ウルジャス様。

 目が醒めていらっしゃるのは、わかっていますよ」

「……敬称は、要らない」

 微かな笑いを含んだような優しい口調だけは昔と変わらず、ウルジャスはいっそ薄く開けた眸で上目遣いに彼をを睨む。

 ウルジャスとかなり歳の離れた、三十路に近い青年がそこに佇んでいた。