外界の音を遠く遮った聖堂のなかに、硬質な靴音が響く。

 棺から目一杯の距離を置き、埃の気配が残る像のひとつに寄り掛かりうつらうつら夢心地だったウルジャスは、その音にもう一度、開き掛けた瞼を下ろした。

 眸を閉じてみれば、一定の速度で几帳面に刻まれる、床を摺る音。

 それだけで、ウルジャスには誰の足音かわかる。

 上質の革を重ねた靴はそれほど堅いはずはないのに。

 いつも氷を割るような清んだ音を、彼の靴底は奏でる。