その一言で、心が決まった。

「でも、あたしは莫迦なんだよ!」

 シェイスは脚を振り上げて、アギの顎目掛けて蹴りを食らわせる。

 不意の暴挙に、アギの身体が壁に沿って横滑りに吹っ飛んだ。

 後ろも見ずにシェイスは走り出す。

 駆けて駆けて、足音もアギの気配も遮断する。

 市場に満ちた色彩が目の端をちらちら駆け抜けた。

 アギは追っては来なかった。