父であれども、棺に納まった男が、ウルジャスに触れたことはない。

 ウルジャスが知るのは、不機嫌な顔ばかりを見せる『王』。

 眉間に皺を寄せ、きつく引き締めた口許や密かに握り締められた拳ばかりが、記憶に残っている。

 古王国の崩壊と、運命を司る女神アッバースの巫女姫。

 俗に云う『王選びの姫』シャリカ・サリエ・アッバーサの争奪に荒れる、中原の混乱。

 『巫女姫動乱』と称される一連の戦火は、数年を経過してもまだ、鎮火の兆しを見せない。