青蒼の夜半に、闇色の鳥を

「で、あんたはどうする?」

 水を所望した『彼』の唇にもう一度水差しを当てて、シェイスは首を傾ける。

 ひとくちずつ、もどかしいほどの速度で生温い水を飲み込んで、『彼』は埃塗れの布地の天井を見上げた。

「どうしましょうかね」

「取り敢えず、あんたはあの城市では死人。

 あんたの自由にしても好いし……それとも、あたしの頼みを聞いてみたりする?」

「願い、ですか?」

 どこかで耳にした、懐かしい単語に『彼』は苦味を噛み締める。

 苦くても、辛い思い出ではなかった。

 愛するひとの傍にいた甘い記憶でもある。

 どうして、あんなにも彼女に焦がれたのだろうか。

 一度だけ。

 たった一夜だけ共に過ごした。

 それだけの縁のために彼女の罪全てを肩代わりするほどの情熱は、どこから生まれたのだろうか。

 いままでも、幾度となく考えた。

 答えはまだ『彼』の手許にはない。