「母上? わかっておいでか?」

 ウルジャスの覚悟を知ってか知らずか、背中を向けたままでインシアが呟く。

「構わぬ」

 か細い肩を、闇にもひかりにも染まりそうな淡色の髪が滑り落ちる。

「己の命を掛けて、お前の祈りの成就を願うのもまた、こころよき業か」

 ――願いの果てに生まれた、子のためならば。

 続けられた言葉は、誰にも聞き咎められずに空気に溶けた。