「え……?」

 おそらく、いまウルジャスはひどく間の抜けた顔をしているだろう。

 他人事のように思いながら、灰色の衣を纏った兄を見詰めている。

 しわひとつない長衣に、研ぎ澄まされた細身の剣。

 どんな質素な格好をしていても、彼は静かな空気を纏う。

 まるで嘘を、静寂の白さで塗り潰すよう。

「私が、ジャスパ王を殺しました。

 後継者としての地位を剥奪された。

 それだけで、充分な理由になるでしょう」

「……嘘だ。

 それならなぜ、王だけを恨む。

 王だけじゃなく、もっと憎むべき人間がいるはずじゃないか。

 あの女や、それに……」

 ――空座に代わりに収まった、ウルジャス自身。