「嘘だ」

 声を荒げたウルジャスを置き去りに、ラザーは何気ない仕草で腰に手を伸ばした。

 否――腰に佩いた、長剣に。

 遅れて耳に届いたのは、数瞬前までは心待ちにしていた来訪者の先触れ。

 ぎりぎりと悲鳴を上げながら、秘められた扉が動く。

 我知らず、ウルジャスは喉が張り裂けんばかりに叫んだ。

「――駄目だ!

 来るな、シェイス!

 シェイス・リン!」