「不可解なら、不可解のままで。

 せめて、終わりだけはきっちりと踏みたいのよ。

 邪魔なんてしたら、殺すから」

 アギの手を振り払って、壁に縋り身を起こす。

 頬に張り付いた砂がぱらぱらと落ちる。

 みっともなく、泥だらけになりながらも睨み据える。

 なのにアギは、なぜか満足そうに笑っていた。

「そうやって、顔を上げていろよ、シェイス・リン」

 久しぶりに、名を呼ばれた。

 シェイスが長になってから、アギはシェイスを『長姫』とだけ呼んでいた。

 塔のうえから聴いたのと併せて、数年で二度。

 それが、アギの示す忠誠。

 アギはいつも、シェイスの意思を尊重してくれていたのだと、今更悟る。