ざらざらする窓枠を乗り越えて、路地へ下りる。

 飛び上がった瞬間の身体の軽さにほっとしたものの。

 着地した途端にがくん、と膝が落ちる。

 思わず、べったりと泥だらけの地べたに手を着く。

 それだけの動きで、シェイスは何度も唾を飲み込み、荒れた呼吸を整えた。

「流石に、かなりきついわね……」

 冗談めかして呟く。

 このまま小汚い地面に頬を付けて、眠ってしまいたい。

 甘い誘惑に、身を任せたくなる。

 ――知りたいことなんて、もう、なにもないでしょう?

 誰かが、耳許で唆す。

「どちらにしても、それは、夜が明けてから」

 息を詰めて、立ち上がる。

 眠るのも倒れるのも、明日に置いておかなければならない。