噛み合わせた歯が痛くなりかけた頃。

 ようやく微かに、起き上がる気力が沸いてきた。

 ほんの少しの勢いを逃せば、もう二度と起き上がれない気がして。

 シェイスは寝台に体重を掛け、寝具を蹴り飛ばした。

 汗ばんだ肌に、べったりと張り付いた長い髪。

 それを振り払い、震える指で夜着を脱ぐ。

 いつもの数倍数十倍の時間を掛けて、じりじりする気持ちを抑えながら帯を結ぶ。

 すでに、空は朱い暮色よりも藍色した薄闇の割合が多くなっていた。

 最後に壁に立て掛けた大剣を掴む。背負おうとして、そのまま手に握る。

 杖のように突いて、向かうのは扉ではなく開け放たれた窓だ。

 薄い木の戸板を透かして、ひとの気配がする。

 アギとサディマに見付かれば、シェイスは寝台に逆戻り。

 そんなのは御免だった。