青蒼の夜半に、闇色の鳥を

「それでももし、お前が運命に抗おうとするのなら。

 エンカランの長姫シェイス・リン。

 お前にひとつ提案だ」

 笑みを含んだ声で。

 決して本気ではない風情で。

 寝転んだままのジャスパが、手を差し伸べる。

「お前、私に仕えてみないか?」

「怒るよ。

 あたしは、一族の名を言葉遊びになんか使わない」

 膝を立てたままで、ふいと顔を背ける。

 争いごとを面倒臭がるジャスパなら、すぐに謝ってくると思った。

 穏やかな、決してこころを透かさない薄っぺらな声で。

 だが、シェイスの予想した台詞は、紡がれはしなかった。