寝室から出ると、椅子に身を預け、アギが祈るように両手を組み合わせていた。

 サディマは背中を丸め、お座りをした犬を思い浮かべる。

 茶色い毛並みをした大きな犬。

 撫でてやりたい。

「アギ、茶でも要るかい?」

「ああ……有難いな。

 貰おうか」

 サディマの声に、アギが顔を上げる。

 エンカランの民にしては薄い色の肌と薄茶色の髪。

 彼もまた、城市に溶け込む道を選び得た青年だ。

 むしろ一族にあって異質な容姿は城市の方が生き易かったはず。

 なのに、アギは一族に残ることを選んだ。

 全て、彼の小さな少女のため。